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webronza騒動のおかげでブログ更新(1)
毎日新聞の石戸諭記者が「webronza問題」について特別寄稿していたからだ。
石戸記者はその記事「Webronza問題-「科学」と「意見」を分けることの大事さについて-」で「ホメオパシーがADHDに対して治療効果がある」という偽りの情報をwebronza編集部が初出時そのままに掲載している事実が大問題であり、悪影響を懸念した批判が主にそこに向いていることは認識した上で、「長期的に見て損失が大きいと考えている」のは「webronza編集部が当該記事を(「科学」と「意見」の見分けがついていないから)「多様で有益な言論」、と認めてしまっていること」であると論じている。
同感である。
webronza編集部は当初から「記事は論評の範囲内」であるとし、それは2月8日の見解(現時点で最後の見解)でも変わっていない。
一貫していると言えば言えるのだが、webronza編集部の掲載直後のツイートを読むと、批判を受けて認識が揺れ動いているのがわかる。
当方は当然、ホメオパシーに批判的。もうすぐ「ニコ生シノドス」も公開予定。でも、この記事のファクトは興味深いです。 @Mochimasa //こんなの載せていいわけ? @chochonmage ホメジャの「治癒体験談集」とどこが違う→ http://htn.to/6FpaoB
↑批判に反応しだした初期のツイート。「ファクトは興味深い」と、あたかも「ヨーロッパホメオパシー事情」を客観的に記述した記事であると言いたげ。
当方も批判的ですが、「擁護」「提灯」とは厳しいご指摘。海外の文脈を知る意味はあるかと…。 @sugibuchi //議論を把握していない @subjunctivepast ホメオパシー擁護か @Kato_Takanobu 提灯記事→ http://bit.ly/hA67YZ
↑まだ「擁護」、「提灯」になっちゃってることに気づいていない。むかついてるのはよくわかる(笑)
念のため、当方は「擁護」は意図していません。海外のファクトが興味深いので議論喚起のために掲載しています。もうすぐニコ生シノドスも公開予定。 @bem21st [ホメオパシー]朝日新聞のホメオパシー擁護記事。 @cactus_f スイスではこんなに穏当に普及してますよ、ってか。
↑ここでも批判的と言いつつも「海外のファクトが興味深い」、「議論喚起のため」と掲載意図を自己弁護ないし、記事を擁護する姿勢。
成功体験談の集積がファクトですか。RT @webronza: 念のため、当方は擁護は意図していません。海外のファクトが興味深いので議論喚起のために掲載しています @bem21st 朝日新聞のホメオパシー擁護記事 @cactus_f スイスではこんなに穏当に普及してますってか
↑「体験談はファクトにはならない」というcactus fさんの鋭いツッコミ。
体験談の部分ではなく、「保険」「ADHD」や「牛」です。 @cactus_f 成功体験談の集積がファクトですか。RT @webronza: 念のため、当方は擁護は意図していません。海外のファクトが興味深いので議論喚起のために掲載しています @bem21st @cactus_f
↑ここで、「ADHD」の一件を「ファクト」だと言ってしまっている。
ADHDの部分は特にかなり悪質。QT @webronza: 体験談の部分ではなく、「保険」「ADHD」や「牛」です。 @cactus_f 成功体験談の集積がファクトですか。RT @webronza: 念のため、当方は擁護は意図していません。 @bem21st @cactus_f
↑怒りの妖怪人間!!
なるほど。否定には触れてないですね。週明けになると思いますが善後策を検討させて下さい。 @cactus_f //ADHDは//その後否定されているという事実を伝えないのはどういう意図ですか。RT //「保険」「ADHD」や「牛」です。RT 成功体験談の集積がファクトですか。
ううむ。そうだとすれば善後策を検討します。しばしお時間下さい。 @bem21st ADHDの部分は特にかなり悪質。QT 体験談の部分ではなく、「保険」「ADHD」や「牛」です。 @cactus_f 成功体験談の集積がファクトですか。RT 念のため、当方は擁護は意図していません。
↑このへんで初めてADHDの一件に疑問を持った様子。「ちょいヤバ」とか思ってる感じ。
おそらく、webronza編集部は「「二重盲検法試験下でホメオパシーがADHDに効果があるという結果報告がある」という記述に疑問を持っていなかったのだろう。
私は編集部が「ホメオパシーに治療効果がある」と考えていたとは思わないが、多分「治療効果があるという試験結果報告」の1つや2つはあり得る、ぐらいには思っていたのではないか。
ホメオパシー側からの反論には「ホメオパシーに効果があるという試験結果もある」という記述が含まれていることが多いし、2005年のThe Lancetに掲載されたシャン(Shang)のメタ分析から不備ゆえに弾かれた「ホメオパシーに肯定的な実験結果」をホメ側が引っ張ってくることもあるだろう。
実際、私も当該記事を読んだときには、ADHD関連の論文の結論部分(ホメオパシー薬が症状のいくつかを顕著に改善させた)について、多いに疑問視したものの、真偽についてはわからなかった。
それをはっきりさせてくれたのがMochimasaさんの検証記事である。
で、問題なのは記事掲載時に編集部がADHDの論文部分でホメオパシーに肯定的な内容がどうもクサいことをわからなかったことではなく、ウソの情報に対処していないことであることは、批判者の一致した意見であるように思う。(いや、本当はジャーナリズムとしては問題なのだが。なんといっても「荒唐無稽」なんだから肯定的な実験結果を疑うべきであり、「肯定的な試験結果」をどこからか引っ張り出してきた岩澤氏の記事について懐疑的にはなるべきだったろう)
実際、そこの胡散臭さを一発で見抜くのは相当の専門知識が必要とされる高い障壁だと思う。
例えば、私なんぞでは論文の信頼性まで検証するのは無理だ。
Mochimasaさんの記事にある元論文の検証はMochimasaさんしか(あるいは同レベルのトレーニングを受けた人しか)できないことだと思う。
骨の折れる大仕事をMochimasaさんはし、我々に提供してくれた。
検証能力がある人が、ある事柄の信ぴょう性について検証し、極めて短期間に公開されるというインターネット普及の最大の長所の一つが発揮されたのだ。
(本件における、その別の例が片瀬久美子さんの「warblerの日記-牛にホメオパシーが効くってホント?」である)
Mochimasaさんの検証を読んだはずのwebronza編集部も、元記事にある「ホメオパシーはADHDに効果がある」と読める記述は科学的な事実でなく、元記事全体の基調になっている「エピソード主義」の証拠
しかし、記事そのものの訂正なり、それに対する注釈なりは、「記事が論評の範囲内」であることを一つの理由として現時点(2月18日)でもされていない。
それゆえ、石戸記者も指摘するように「編集部が「科学」と「意見」を混同しているように見える」のだ。
私は当初そうは見ておらず、「社内事情」であるとか「メディアであるwebronzaと筆者である岩澤氏との関係性」とかの話なんだろうと思っていたのだが、2月8日のwebronzaのツイートで、「本当に混同している」との疑いを持つようになった。
ニセ科学批判クラスタなどの長年の議論の積み重ねには、最大限の敬意を表します。また、「不用意な記事(泣)」(菊池誠さん)というお気持ちには、個人的にも非常に共感します。しかし、メディアは一定の範囲内であれば「異論を述べる自由」を守る必要もあります。
「一定の範囲内」?「異論」?
「娯楽記事」でもなんでもない「医療を扱った記事」で「事実でない情報」は「一定の範囲内」でも「異論」でもないだろう。
続く(はず)
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